河合隼雄「物語とふしぎ」(岩波書店)を読んでいます。
あるきっかけで、この本の引用文を読み、心を
つかまれた気がして、本を注文しました。
その一節には、このようなことが書いてありました。
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子供が、せみの鳴き声を聞いて、お母さんに、
せみが何故鳴いているのかをたずねる。
お母さんは、答えを言わずに、「なぜでしょうね」と逆に問いかける。
すると、子供は、「せみはお母さん、お母さんと呼んでいるんだね」と言って、
自分の答えに満足する。
これは、科学的には正しい答えではないかもしれないけれど、
子供が自分なりに見つけた「納得のいく答え」であり、そこには、物語が生まれている。
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人がふしぎに思う気持ち、疑問をもったときに、この現象を説明する方法に、
「自然科学」があります。
近代の人は、この、自然科学によって世界を見ることに心をつくしてきたけれど、
この方法は、ややもすると、人の心の中のことや、人と世界のかかわりを無視する
ことになる、と筆者は述べています。
確かに、自然科学によって人の疑問に答えることは、とても魅力的なことですが、
世の中の現象には、いろいろな側面があり、1+1=2 とばかりはいかないことも
たくさんあります。
人は、何かを理解するとき、気づかぬうちに、客観的な事実と、その人ならではの
イメージや「物語」をまぜあわせているのかもしれません。
子供のうちに、客観的な知識を吸収することも大切だけど、自分のなかで
「物語」を組み立てていくことができるようになることも、同じように大切なこと
なのだと思います。
それが、想像力や創造力につながっていくに違いありません。
おそらく、このことは、以前からもやもやと私自身の中で感じていたことなのですが
そのもやもやを、この本でスパッと「こういうことでしょ?」と、竹を割ったように
見事に指摘された感じがします。このスッキリ感は、そうしょっちゅうあるものでは
ありません。
本の続きを、まだまだ読んでいきます。